ライターが専門性を高める10のメリット 医療だけを取材するフリーランスの経験談

2019年6月2日

「ライターとして稼いでいくためには専門性を持った方がいい」「専門性のあるライターは重宝される」

ライターであれば、こんな情報を一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。

幅広く取材しているライターの中には快く思っていない人もいるかもしれませんが、実際どうなの? と関心を持っている人もいるはず。

ネットの中には「ライターが稼いでいく方法」を定型化している記事も見かけますが、多くの場合に書き手が特定できず、その人が経験したことかどうかもわかりませんよね。

そこで、独立してから医療だけを取材し続けて間もなく3年が経つぼくが、実際に感じたことを紹介していこうと思います。

儲かりますよ! みたいな受けのいい情報はありません。ぼくは人一人が生きていく上で問題ない程度の収入は得ていますが、新規の依頼の8割を断っていてさほど稼いではいないので。

でも、いいことはたくさんあるなあというのが実感。ご参考ください。


1、知識がうなぎ登りに増えていく

まずはこれ。特定の分野を取材し続ければ、知識がうなぎ登りに増えていきます。

幅広く取材している人に比べるとそのスピードの差は歴然で、独立して1年目のころは「きのう聞いたことがきょうの取材で役立った」なんてことが頻繁にありました。

2、より深く、より効率的に取材できるようになる

ライターとして最も大切なのは、目の前にいる取材相手に好意と熱意をもって楽しく話を聞いていくことだとぼくは思いますが、知識も重要です。

その分野に関して浅くても広い知識を持っていれば、まず、聞かなくていいことが増えますよね

例えば、胃の内視鏡検査で言うと、方法としては口から管を通す経口内視鏡と鼻から管を通す経鼻内視鏡があって、「経鼻だと経口で起こり得る吐き気を催すことがなくて楽」というのが医療の世界の一般論としてあるわけです。

ぼくはこれらのことを既に知っているので、ゼロから聞いていく必要はなく、こんな風に掘り下げていくことができます。

「~(一般論)をよく聞きますが、経口でも鎮静剤を使えば(麻酔をかければ)楽に受けられるのではないでしょうか」

「経鼻は楽だと言いますが、一方で鼻腔が狭い人の場合、管を通すときに痛みが起こる可能性もあると聞きます。先生はどうお考えですか」

「経鼻だと管が細いのでちゃんと見られるのかと疑問に思う人もいると思います。少し前は経鼻だと画質が荒かったと聞いたことがありますが」

こういった質問をすることで「経口より経鼻の方が楽」という一般論に奥行きを持たせることができますよね。

「確かに痛みがないことだけを求めれば麻酔をかけて経口を行うのがベストだけど、検査終了後に休んで意識が正常に戻るのを待つ必要があるから時間はかかる」

「鼻から管を通す際のルートは4つあって、慎重に見ていけば、どこかからは痛みなく入る可能性が高い。だけど、若い人で特に小顔の女性の場合は鼻からだと痛みが強くて入らないこともある」

「確かに経鼻だと画質が悪いと言われたこともあったけど、機器が進歩したから、『経鼻を使ったために経口で見えたものを見落としてしまう』なんてことはあり得ないと言われているよ」

一般論はネットでも知り得ますから、取材ライターとしてはこんな情報をゲットしたいところかなと。

3、仕事全体の効率化も図れるようになる

知識が増えることで、取材中だけではなく、仕事全体の効率も上がります

ライターの仕事は主に、①企画、②取材相手の選定、③アポ取り、④準備、⑤取材、⑥テープ起こし、⑦ライティング、⑧校正、⑨原稿に関する取材相手とのやり取り・修正、⑩原稿に関する編集者とのやり取り・修正―の10項目が工程としては考えられて、案件によっては①~③、⑥、⑨、⑩がなくなることがあります。

専門性を高めていくと、この中の③と⑧以外の工程を時短できます

まず、取材人数と知識が増えるほど企画を立てやすくなり、取材相手も選びやすくなりますよね。

準備にかかる時間も減ります。テープ起こしやライティングにかかる時間も同様で、さらに質が高い記事を書けるケースが増えていくことで、取材相手や企業から修正を依頼されることも減ります

実際にぼくは企画から全て行う仕事もしていて、その中に今秋から始まった週刊誌の健康コーナーがありますが、過去に3本書いた原稿に対して、取材した医師からの修正依頼はほとんどありませんでした。うち1本は全くありませんでした。

4、取材先からの評価が得やすくなる

知識が増えて取材時の効率が上がり、深堀りしやすくなることで、取材先からの評価も得やすくなります

その分野についてある程度の知識があることで、取材相手は「変な記事は書かれないだろう」と安心しやすくなりますし、その人からすれば基本的だと思えることを話す手間がなくなりますから、ストレスも減ります

「そうそう」「そうなんだよ」「よく知っているね」「確かにそれは患者さんからよく聞かれること」といった反応が増えていくと、自然に取材も盛り上がって、思いもしなかったいい話・深い話を聞けた、なんてこともあります。

そして、自分が書いた記事に対して「非常に正確」「わかりやすい」「よくできてる」「そのまま出して(掲載して)」といった声も聞かれるようになる。

編集者や企業の担当者から喜んでもらえるのはうれしいですけど、ぼくの場合は取材相手に認めてもらえる方がうれしいんですよね。

取材するときは基本的に企業が求めることを意識するので、取材相手を何らかの枠にはめて話を聞くことになります。

そういった条件があっても、取材相手が気持ち良くなってくれることがぼくはうれしい。

5、顧客からの評価が上がり、リピートされやすくなる

1~4の結果、クライアントからの評価も上がります

何か特定の分野だけを取材し続けているライターは全体から見れば少なくて、その分野に特化した媒体であれば専門ライターは貴重な存在

「他のライターよりも面白い情報が引き出せる」「取材先からの評判もいい」「原稿が正確」とくればそれは評価は上がりますよね。

実際は「感じがいい」とか「メールでのコミュニケーションがスムーズ」とか「締め切りを必ず守る」とかいったことがライターの評価を大きく左右するわけですが、仕事の質に焦点を絞れば上のようなことは言えます。

ちなみに、ぼくは2016年3月に独立してから20の企業と仕事をしたわけですが、企業の状況的に継続的な受注が見込めて、かつ、ぼくが引き続き仕事をしたいと思った会社からのリピート率は100%です(12社中12社)

8社とは1度きりの関係で終わったわけですが、それはホームページのリニューアルなどの単発案件だったり、ぼくから2度目の依頼を断ったりしたためです。

ぼくは人の好き嫌いがはっきりしていて、「合わないな」「何か嫌だな」と持ったらすぐにその人とは絡まないようにしているので、割合的には後者の方が多いですね。

でも、自分に専門ライターとしての知識や技術があり、一緒に仕事をする人への思いやりがあれば、「この人とはまた仕事をしたい!」と自ら思いを寄せた人からも慕われやすくなります。これはとてもうれしいことです。

6、ブログの検索上位化が成功しやすい

今までと方向性が違うんですが、実践するとかなり得することだと思う。

専門性を持つライターであれば、専門分野をタイトルに盛り込んでブログを運営することで検索上位化を図れます

というのも、ぼくの印象からすればまだまだ多くのライターは自分のブログやサイトを持っていないし、仮に持っていても専門性の高い人は圧倒的に少ないから。

つまり、企業側が「●●(専門性)ライター」で検索しても「いい人が見つからない」状況なんですね。

だからこそ、そういった企業の悩みに応えられるような、「この人なら頼んでも良さそうだ」「頼んでみたい」と思われるような内容のブログを運営することで、ブログ経由で仕事を得られるようになります。

ブログを持つ専門ライターが少ないからこそ、検索上位化も可能になります。

ぼくは独立1年目にブログを立ち上げて、その3ヵ月後に「医療ライター」などの検索条件で1ページ目にブログが表示されるようになりました

それからおよそ月に2件のペースで企業から問い合わせをもらえるようにな2年目からは営業をしなくていいようになりました。

この状況は今も続いていて、2018年12月現在までに49の企業から問い合わせをもらいました。

ブログの運営方法を含め、「どうすれば営業せずに仕事を獲得し続けられるか」については過去に書きましたので、興味のある方は最下部の「こちらもどうぞ」の記事を参考にしてみてください。

検索上位化が狙える専門性についても紹介しています。

7、嫌な仕事をしなくて済むようになる

ライターとしての価値とリピート率が高まって、さらにブログの検索上位化に成功して自動的に問い合わせが来るようになれば、仕事と人を選べるようになります

結果、嫌な仕事をしなくて済むようになります。

「好きな仕事だけで食べていけるようになる」としなかったのは、ぼくがまだ途上にあるから。

医療ライターとしての成長のために、「嫌じゃないけどそんなに好きでもない」という仕事もまだ引き受けているんですね。だから「好きな仕事だけで」と言うのは過剰だと思った。

8、自己肯定感が高まる

1~7の結果、自己肯定感が高まります。

専門ライターとして自分の存在意義を少なからず感じることができますし、会社員とは違って人と仕事を選べますからストレスも少なく、そうできている自分に対して「けっこうイケてるじゃん」と思えるようになる。

「俺はこれを武器に世を渡っているんだ、渡っていけてるんだ」「俺にはこれがある!」という自信を得やすくなるわけです。

まあ、時代的には一つの武器に固執するのではなくて、小さな武器をいくつも持っている人の方がリスクヘッジできて生き延びやすいと思いますが。

9、友だちの相談に乗ってアドバイスできる

なにげにいいなと思うことが、友だちの相談に乗れること。

例えばぼくの場合、過去に「根管治療を受けようとしているけどこのクリニックでいいのか」と聞かれて役に立てたことがありました。

「根管治療を受けるクリニック選びのポイントとして一番に見るべきは機器。専門に経験を積んできた歯科医師がいいわけだけど割合的にはかなり少ないからね。

診断と治療に精密さが求められる分野だから、CTとマイクロスコープがあるところにした方がいいよ。

特に、見る物を約20倍まで拡大できるマイクロスコープは精度の高い根管治療を行うためには必須。

歯の中の神経は肉眼じゃ見えないわけだから、この機器を使わずに勘に頼って根管治療をやってるところは避けた方がいい。

その先生いいんじゃない? ホームページ見たけど歯を守ることを重視しているようだから丁寧にやってくれるかもしんないし、機器の面でも気になるところないし」

「ありがとう! 早めにまた行ってみる!」

※根管治療…虫歯が進行して神経に達したときに行う治療。神経を取り除いて歯の中の汚れを掃除する。一般的に神経を取ると歯の寿命は縮まると言われる。

これからは「胃がんで死なない方法」「大腸がんで死なない方法」「病気で失明しない方法」といったテーマもブログまたはYouTubeに投稿して、親しい人の役に立っていけたらいいなあと思っています。

10、探究心が強くなる

最後に挙げたいのがこれ。

ライターの仕事の最大の魅力って、知らないことを知られることだと思うんですね。ぼくの場合は、「知られる」というのがいろんな喜びの土台にある。

専門的に取材を重ねていくと、先に挙げたように知識が増えて自分の興味のあることを聞ける時間も確保しやすくなりますし、知っているからこそ疑問に思うことも増えていく。先述した胃の内視鏡検査に関する質問例のような感じですね。

知っていくほどに「これはどうか」「あれはどうなんだろう?」と疑問が増えていく、その疑問が解消したらまた新たな疑問ができる

こんな気持ちのいい連鎖が生ま、探究心が強くなっていくのも専門ライターの醍醐味と言えるでしょう。

いろんなメリットがある一方、デメリットは…?

ぼくは医療を取材するのが好きで、「稼ぎやすそうだから」などといった戦略で分野を選んだわけではないので、特にデメリットは感じていません。

稼ぐためだけに専門性を高めているとしたら、「ライバルが思った以上にすごくてそんなに仕事を取れない」「稼げるけど楽しくない。そもそも何のためにライターをやってるのか…」といったマイナス面や思いが生まれてしまう可能性がある。

ぼくは記者時代にいろんな取材を経験して「自分に向いてそうだ」と思った上で医療を専門にしたわけなので、今からまた幅広く取材したいとも思いませんし。

ただ、可能性として胸に留めておいた方がいいこともいくつかあります。

「天狗になりやすくなる」「井の中の蛙になりやすくなる」「先生扱いされて良い指摘を得づらくなる」「この程度でいいかと満足してしまって向上心がなくなる」「固定観念に縛られる」「柔軟な発想ができなくなる」「大衆の疑問をイメージしづらくなる」

少なくともこれらはパッと浮かびます。

これからもフリーランスの医療ライターとして生き延びていくために、こういったリスクがあることは頭に入れてやっていきたいです。

「じゃあ、どんな人は専門ライターに向いているの?」「分野選びのポイントは?」といった疑問を持つ人もいるかもしれないので、このあたりのこともまた書こうと思います。

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